日本年金機構の情報流出事件の真の原因は何だったのか?

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日本年金機構の情報流出事件の幕引きを図りたい厚生労働省

2015年8月20日、21日にかけて、日本年金機構と厚生労働省からそれぞれ、「不正アクセスによる情報流出事案に関する調査結果報告について」と「日本年金機構における不正アクセスによる情報流出事案検証委員会の報告書」が報道(プレスリリース)されました。

過去に社保庁問題にも関わったことのある郷原信郎弁護士の書いた記事によれば、機構は厳しい報告書、厚労省は優しい報告書を提出したとあります。

厚労省については、週刊文春が「上司を庇った? 17日間抱え込んだ厚労省係長を直撃」という記事を書いていたように、当事者意識を持つべき組織であるにも関わらず、結局のところ、機構に責任を押し付けたということでしょうか。

確かに、もともと、年金業務は厚生労働省が行うべきところ、法律で日本年金機構に委託しているのですから、監督責任はあると思います。

しかし、厚生労働省にも、情報セキュリティのプロは事実上いない(担当者は1人)ことから監督もくそもあったものではなかったということです。

委託した以上、個人情報の管理もしっかりしろ、ということなのですが、逆に言えば、日本年金機構が好き勝手適当にやっていたということです。

内閣サイバーセキュリティセンターが不正のアクセスを検知し厚労省へ連絡、厚労省の担当者である係長が日本年金機構に連絡して、自分の上司に報告をしてないことから、事実上、連絡機関に過ぎなかったということです。

報告を上に上げずに、係長が勝手に処理を進めていたことから、厚労省としては何もしていないに等しいのですが、厚労省の報告書では、そのことをあまり厳しく指摘していないようです。

郷原弁護士のいうとおり「責任回避に終始して、日本年金機構という組織自体の問題に正面から向き合おうとしなかった厚労省の対応」は、的を得ていると思われます。

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日本年金機構の報告書は経緯が詳細に分析がなされているが

一方で、日本年金機構の報告書はどうだったのか。

身内に厳しい報告書となっていて、まとめにはこうあります。

「ガバナンスの脆弱さ、組織としての一体感の不足、リーダーシップの不足、ルールの不徹底など、旧社会保険庁時代から指摘されてきた諸問題があり、また、・・・・・緊張感、責任感、使命感が共有されるに至っていなかった、と言う組織全体の基本姿勢に関わる問題がある」

今回の事件についても、社会保険庁時代からの諸問題が原因と指摘しているわけです。

結局、日本年金機構に衣替えしただけで、中身は変わっていないということです。

詳細な分析はしていますが、原因は相変わらず、職員の資質の問題に帰されるわけです。

ただ、個人的な見解ではありますが、現場の年金事務所の職員のレベルは、他の役所に比べても遜色はないと思います。

知り合いの年金の手続きに行った際の職員の対応の迅速さ、丁寧さは、ダメな民間会社よりも上を行っているなと感じたことがあります。

そういう意味では、平社員の問題というよりも、やはり、管理職の問題が大きいと思います。

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日本年金機構は管理職が無能な組織?

失敗の本質というベストセラーになった書籍を読むと分かるのですが、戦前の日本軍は末端レベルは非常に強力で、万歳アタック(玉砕攻撃)を恐れもしない組織だったのですが、指揮する司令官が無能であったため、多くの兵士が死に追いやられました。

インパール作戦など最たるもので、何十万もの兵士が短期間に死んだわけです。

その日本軍の組織風土というのが、今の日本年金機構を含む役所組織にも引き継がれているのではないでしょうか。

職員が有能でも、管理職が使えない組織。

日本年金機構の報告書にも、CIO(システム部門担当理事)、情報セキュリティ担当部署の部長、グループ長及び担当者がラインとして対応してきたが、基本的対応は担当者任せ、とあります。

また、21日の日経新聞にも、「基本的な問題は人事制度にある」「能力のない管理職がいることに強い意見を言う新入職員がいる」、水島理事長は20日の記者会見でこう明かした、とあります。

新聞報道から推測するに、日本年金機構には、厚生労働省の職員(天下りのキャリア官僚?)、社会保険庁出身の職員、民間から中途採用された職員、日本年金機構が発足してから採用された職員、有期で雇用されたバイト(?)の職員、それから日本年金機構から委託を受けた民間業者が混在しているわけです。

これら人種のるつぼともいえる組織をまとめあげるべき管理職は、ある程度、有能でないと務まらないわけです。

ただし、有能というのは、仕事ができるという意味ではありません。

事務処理能力や業務を回していく能力ではなく、組織をマネジメントする能力、部下を統率する能力です。

厚生労働省、日本年金機構は風通しが悪い旧日本軍と同じ

「失敗の本質」にもありますが、インパール作戦を指揮した牟田口廉也は、強気の作戦で知られ、インパール作戦時も、次々と部下を更迭します。

牟田口は、第15軍司令官まで上り詰めるような人間で、難関の陸軍大学校を突破していますし、おそらく優秀な人間だったのです。

ただし、個人としては優秀だったかもしれませんが、司令官として、部下の心を掌握し、組織をマネジメントしていく能力はなかったのです。

本部に在籍しているCIO(システム部門担当理事)、情報セキュリティ担当部署の部長、グループ長にも同じことがあてはまるのではないでしょうか。

仕事する能力自体は長けていて、そこそこ実績もあることから、出世をする。

でも、管理職として、組織をマネジメントする能力がないため、結局のところ、大事な作戦は失敗する。

いまでこそ、戦死者はでませんが、5月の個人情報流出事件のようなことが起きてしまう。

風通しが良い組織であれば、部下も上司へ進言し、上司も積極的に問題に取り組もうとしたはずですが、そういった形跡はまったくなかったわけです。

また、もうひとつ言えるのは、牟田口のような、今でいうパワーハラスメントを行う管理職が多いのではないかと思われます。

横暴な管理職に対しては、悪い報告は上げづらいものです。

すぐに怒鳴られますから。

悪い報告ほど迅速へトップまで上がらないと組織としては機能しないのですが、担当者レベルは報告しても怒鳴られるだけで、管理職も適切な指導ができないので、報告もしなくなり、情報が組織として共有されなくなるわけです。

今いる管理職の適性を確認し、組織のマネジメント能力がしっかりした者のみ再度を全員登用しなおすくらいの荒療治をしなければ、解決しません。

日本年金機構の情報流出事件の真の原因は、報道にある「基本的な問題は人事制度にある」で間違いないです。

この対策、対応として、「人事評価制度を抜本的に見直す」との報告書は、これはこれで正しいのでしょうが、いかに直すのか。

360度評価とまではいかなくとも、270度評価くらいまで広げて、管理職に対する部下の評価を人事評価に導入しないと、日本年金機構という組織は変われないでしょう。

(厚生労働省HP,日本年金機構HP,新聞報道、「失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫) 文庫(1991)」を参考にしました)

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